「キャリア自律」を促す組織風土づくりにflierが活きる理由

株式会社みずほフィナンシャルグループ

業種:金融・証券 / 従業員数:2,270人

人材・組織開発部キャリアデザイン室 中村真悠子さま 長谷部由実さま

課題 ・グループ誕生当時の人事制度では環境変化への対応が難しくなってきていた。
・社員と会社が対等な関係を築き、ともにキャリアをつくることを目指したかった。
打ち手 flierの利用を促し、社員が自ら学ぶ機会やキャリアについての対話を後押しする。
効果 「キャリア自律」に向けて、学びの組織文化の土台ができている。

新人事制度〈かなで〉に込めた想いとは?

――御社では、社員と会社が「ともに創る。ともに奏でる。」ことに思いを込めて、新しい人事の枠組み〈かなで〉へと2024年の完全移行を進めているとのことでした。〈かなで〉を発起された背景は何でしたか。

中村真悠子さま(以下、中村):〈かなで〉が始まったきっかけからお話しますね。みずほフィナンシャルグループが誕生し、2023年でちょうど20周年を迎えました。人事制度については、何度か改定を行ってきましたが、人事運営はグループ誕生当時から大きく変わっておらず、社会の大きな変化への対応を迫られていました。これまでは予測がしやすい時代で「課題を解決する能力」が高い人材が求められていましたが、現在では、ビジネスの正解がないなかで、自ら「課題を発見する能力」を持った多様な人材がますます重要になってきています。

また、働き手の価値観も変わって、一社で定年まで働くことが当たり前ではなくなり、転職という選択肢も増えています。働き手に選ばれるには、多様な人材の働きやすさや働きがいを提供しなければなりません。これまでの人事では、会社が決めた人事制度や運用を社員は受け止める形で、一人ひとりが置かれたステージに合わせた働き方や、資質やキャリア志向を起点にした育成やキャリア形成が十分にできているとは言えませんでした。そうした課題意識のもと、人事の枠組みを見直し、グループ5社(株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社みずほ銀行、みずほ信託銀行株式会社、みずほ証券株式会社、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)で共通の人事制度を社員とともにつくりあげようとしているのが、この〈かなで〉のプロジェクトです。

たとえば、〈みずほ〉では、会社を辞めることなく銀行・証券・信託・シンクタンクなどのグループ会社に転籍異動ができるという特徴的な人事運営を行っています。人事制度が共通となれば、これまで会社間で異なっていた処遇や働き方の障壁がなくなり、会社間の行き来がより円滑となって、事業領域や会社を超えた幅広いキャリア形成が可能となります。そうした土台を整え、社員が自分らしいキャリアを築いて力を発揮することで、社員と会社がともに輝き成長していく――。これが私たちのめざす姿です。

めざすのは、社員の「キャリア物語」をともに創り上げること

――〈かなで〉の考え方をベースに、御社ではどのような人材育成の方針をとっているのか教えていただけますか。 

中村:ビジネス戦略と人事戦略を連動させ、会社の壁を越えた人材配置・登用などを通じてビジネスをリードする人材の育成を各事業部門で行っていく方針です。その土台となるのが「社員のナラティブ」です。会社が社員のキャリアを一方的に決めるのではなく、一人ひとりの自分らしさを起点にしたキャリアストーリーを創り上げることが、社員の潜在能力を最大限発揮させることにつながると考えています。〈かなで〉がめざすのは、社員と会社が対等な関係で対話することによって社員一人ひとりのキャリアストーリーを紡ぎ出し、キャリア自律を促していくことです。その思いが〈かなで〉のパーパス「ともに創る。ともに奏でる。」に込められています。

こうした人事制度の刷新にはトップの強い思いがありますが、特にみずほフィナンシャルグループのCHRO(最高人事責任者)を務める上ノ山信宏の〈かなで〉への思い入れは強いものがあります。私たち人事メンバーにも「答えのない問い」を頻繁に投げかけてきます。これにより、「人材育成とはどうあるべきか?」「働きやすさや働きがいとは何か?」などの本質について考える習慣がついたように思います。

何より、ミドルマネジメントの意識が変わってこそ、マネージャーとメンバー一人ひとりとの「キャリア」に関する対話が深まっていくものです。そのため、マネジメント層の研修には特に注力しています。

――御社の人材育成で課題意識に感じていることや、強化したいことは何でしょうか。

中村:人的資本開示に向けて、各社が試行錯誤しながら自社の指標を定義し、測定していると思います。私たちも人事主導の研修の学習状況は把握していましたが、他部門が主導している研修については詳しく把握できていませんでした。そこで、グループ全体の人材育成の投資状況を可視化して、どのような研修が行われているか、リソースが適切に配分されているかを監督していく必要があると考えています。

人材育成投資のデータ集計では、集合研修や多種多様な学習サービスのデータを集計しなければならないのですが、全社員のEラーニングや自己研鑽支援状況を集約するのは大変です。その点、flierは「人的資本経営関連項目」として学習時間を集計したレポートを出してくださるのでありがたいですね。管理画面を見るだけで済むようになり、集計がかなりラクになりました。

「コロナ禍でも、学びの支援を止めない」

――flierを導入された理由は何でしたか。

中村:これまでは東京で行う集合研修が中心で、首都圏以外から参加する社員や育児などライフイベントで多忙な社員には研修参加へのハードルがありました。そのため、社員の多様な学習のニーズに合うように、「オンラインでいつでもどこでも行えるもの」を提供する必要性を感じていました。

そんな折、新型コロナウイルスの拡大により、研修のあり方の見直しを迫られました。コロナ禍でも、社員の「学びの支援を止めてはいけない」。そんな思いのもと、flierはクイックかつ幅広く提供できる学習ツールであり、私たちのニーズにマッチしていると感じ、2020年6月に希望者を対象にflierの導入を決めました。利用者からも好評で、2022年10月からはグループ5社の全社員が利用できるように拡大しました。

――他の教育サービスもあるなか、flierを導入いただいた決め手は何でしたか。

中村:今はネットの動画で手軽に学べる時代となりましたが、深く学ぶという意味では、本からしか得られないものがあると考えています。多様な立場や視点で書かれている本にたくさんふれることで、「あの本で読んだことが、この本とこの知識とつながっている」という体験が生まれ、知識が深まっていきます。多忙な社員がたくさんの本に効率的にふれることができる、それがflierを選んだ決め手の1つでした。

読書会で本の学びをアウトプット。
flierが「自ら学ぶきっかけづくり」に

――flierを具体的にどんな形で活用していただいていますか。

長谷部由実さま(以下、長谷部):flierの強みは、短時間で幅広い分野の知識をインプットできるところです。たとえば営業店の社員は多種多様なお客様と向き合うので、会話の話題として活用できるという声をよく耳にします。また、企画の提案やチームのマネジメントに活かしている方もいます。企画書のまとめ方に関する要約をシェアするなどして、メンバーのスキルアップ支援にも役立っているそうです。

――flierの活用によって、御社ではどのような効果が生まれていますか。

2023年9月時点でflierの利用者は1万人を超えています。20代から60代までこれだけ幅広い層が利用していることが、組織としての「学びの文化づくり」につながっていることの現れだととらえています。

いくつかの部室店では、自発的に読書会を開き、おすすめの要約とその学びを発表しているそうです。このように、社内のコミュニケーションが活性化しているだけでなく、「自ら学ぶきっかけづくり」ができていることは育成上の大きな効果です。

――学びのアウトプットの機会も増えているって素晴らしいですね! 

長谷部:flier上の特集記事も充実していて、文章の構成やまとめ方が勉強になっています。文章の書き方や要約の仕方は、議事録や資料作成など、日々の業務でも応用できますよね。ですので、今後たとえば「要約の仕方」を紹介した記事もあるといいなと思いました。 

――利用促進に向けて「こんな工夫が効いた」というのはありますか。

長谷部:当社では、キャリア研修やスキル研修などの研修機会も充実していまして、研修後にはキャリアや自己啓発に関する情報提供のメールを送っています。このまえは、年代別やスキル別に役立つ要約の選書をflierにお願いし、その内容を送ったところ、flierの利用者が増えました。

また、「flierのおすすめ要約」を3分ほどで紹介する動画をつくって社内に発信し、flierの認知や利用を促しています。そのたびに反響があり、社員の興味関心があるのが伝わってきます。

今後は、当社がグループ共通で多様な学習機会を提供しているデジタルプラットフォーム「M–Nexus」上で、flierの促進を積極的にしていきたいですね。「ミッションを達成するとバッチがもらえる」といったクエスト企画を実施するなどして、「楽しみながら学ぶ意欲」を高めていけたらと考えています。

学びやキャリアについて、気軽に話し合える組織風土づくりへ

――2024年に〈かなで〉へ完全移行された後の「人材育成・組織」のビジョンはどのようなものでしょうか。

中村:社員と会社が対等な関係を築き、社員が高いエンゲージメントで働けるようになるには、インクルーシブな組織風土が不可欠だと考えています。当社は数年前に銀行のシステム障害でお客様にご迷惑をおかけしました。その際に課題に挙げられたのが、「上意下達で言うべきことを言わないカルチャー」です。今後は、上下関係なく意見を自由闊達に言い合い、自律的に行動することが歓迎されるような組織カルチャーをつくりたいと考えています。そのために社員の心理的安全性の確保は非常に重要です。

心理的安全性は、「学びの文化」づくりでも重要だと考えています。社員の中にはキャリアや目標のために自発的に自己研鑽に取り組んでいるものの、「意識高い系と思われるのでは」と感じて、職場で開示するのをためらってしまうという声も聞こえてきます。上司側も、「キャリアやプライベートについてどこまで聞いていいのだろうか」と躊躇する人もいるようです。本来なら「こんな試験を受けてスキルアップをしたい」「今後のキャリアに活かせるよう〇〇を学んでいる」などと、上司とメンバーが気軽に話し合える関係性が理想です。これが実現してはじめて、ともに学び続ける組織になれると考えています。

――自ら学ぶ人たちを可視化して、応援するような取り組みは、学びの文化醸成につながりそうですね。

中村:金融機関では入社後に取得すべき資格が多くあり、20代はかなり勉強しないといけないのですが、業務のベテランになってくる30代は、プライベートも忙しくなり、特段新たに学ばなくても仕事をこなせるので、学びの必要性を感じにくくなります。ですが、従来の方法が今後も通用するとは限らず、チームを束ねる立場になれば、幅広い視野がないといけない。現状に満足せず、40代、50代になっても、これまで得た専門性や経験に頼るだけでなく、自律的に学び続けてもらいたいですね。

期待するのは、「人材育成効果」を定量化して、分析する機能

――御社のめざす姿に向けて、flierに期待することや、ほしい機能はありますでしょうか。

中村:社員の学びが仕事やキャリアに活きているのかの相関性を見出し、人材開発に活用していくことが理想です。そこで、学びの効果をどのようにして測定・分析していくといいのかが、今後の課題です。

たとえば、〇〇の分野を学んだことで、本人のエンゲージメントやマネジメント力がどれだけ上がったのか、チームの心理的安全性にどれだけ寄与したのか。こうした点をスコア化して、業績にどうつながっているかが定量的に可視化できれば嬉しいです。管理者が分析内容を一覧できるダッシュボード機能があるといいですね。

長谷部:ユーザー目線では、社員がマイページを開くと自分の学びスコアや、同じ年代やグループの平均と比べた位置、上位者ランキングが一覧できるといいですね。当社では競争があると達成意欲が高まる「アチーバー」タイプも多いので、学習意欲が刺激されると思います。

中村:別の観点では、私たちも試行錯誤しているので、flierを利用している他の企業さまと、活用事例や人材戦略について情報交換できるコミュニティがあると嬉しいですね。

――今後のサービス改善に活かしてまいります。貴重なお話をありがとうございました!

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