ダイバーシティマネジメントとは:企業で取り入れるためには
ダイバーシティマネジメントとは、多種多様な個性や特性の人材が持つ、あらゆる多様性を事業に取り入れる取り組みです。事業のグローバル化や価値観の多様化が急速に進む現代において、あらゆる企業が取り入れていかなければならない価値観のひとつと考えられています。
国際的な競争力にも直結するダイバーシティマネジメントは、企業にどのように取り入れていけばよいのでしょうか。今回はダイバーシティマネジメントが求められる背景と、企業に取り入れるための方法について解説します。
要点1 |
ダイバーシティの確保は今後どんどん重要になる |
要点2 |
企業で導入していくにはトップの発信と従業員の巻き込みが重要になる |
要点3 |
まずは、従業員の心理的安全性の確保が優先事項である |
目次[非表示]
- 1.ダイバーシティマネジメントとは
- 2.なぜ今必要と言われているのか
- 2.1.少子高齢化の進行
- 2.2.グローバル化の波
- 2.3.VUCAの時代の到来
- 3.企業で導入するためには...
- 3.1.人材評価基準の明示
- 3.2.企業のビジョンを発信する
- 4.日本企業での導入事例
- 5.企業で取り入れるための第一歩は
- 5.1.コミュニケーションを円滑にする
- 5.2.off-JTでの学習を促進する
- 6.企業の多様性に貢献する、flier法人版
- 7.まとめ
ダイバーシティマネジメントとは
あらゆる価値観が急速に移り変わる現代において、ビジネスの現場では多種多様な個性を受け入れる柔軟な姿勢が求められるようになりました。ダイバーシティマネジメントは、あらゆる個性を持つ従業員の可能性を広げ、多様性を持つ人材を積極的に活躍させる取り組みとして、重要視されています。
日本国内では女性の社会進出がダイバーシティマネジメントと直結して語られることも多くありますが、これは本来の狙いとは異なります。ダイバーシティとは「多様性」「相違点」といった意味を持つ言葉であり、男女の違いに留まるものではありません。性別だけでなく、年齢や生き方や思想など、あらゆる違いを受け入れ活かす行動への取り組みがダイバーシティマネジメントです。
経済産業省では、ダイバーシティ推進を経営成果に結びつけている企業を「新・ダイバーシティ経営企業100選」として選出しています。その選出された面々を見れば、ビジネスにおける多様性と企業の競争力の繋がりが証明されたと言ってよいでしょう。もはやダイバーシティマネジメントは、企業にとってイメージ戦略として語られるものではなく、経営成果のために必要な取り組みになっているのです。
『成果・イノベーションを創出するダイバーシティ・マネジメント大全』
企業にとって生存に必要な “イノベーション”。その真の意味は質の異なる2つの要素の「新結合」であると言われています。企業におけるダイバーシティがもたらすものは、異なる視点や視野を持った人々の協働です。それは「新結合」の可能性を広げることに他なりません。
なぜ今必要と言われているのか
ダイバーシティマネジメントという言葉そのものは、2004年頃にはすでに日本に入ってきていたといいます。そのダイバーシティマネジメントが今注目されているのはなぜでしょうか。その背景には、近年急速に変化する社会情勢の存在が大きく影響しています。
少子高齢化の進行
近年加速度的に進行している少子高齢化の影響により、労働人口は年々減少を続けています。かつてはアルバイトの入門として捉えられていたコンビニエンスストアの店員も、今や日本人の働き手が見つかりにくいと言われています。
今後あらゆる年代で労働力不足が表面化する中で、未だ活用されていない労働力をいかに発掘するかが、企業が抱える大きな課題のひとつです。女性や高齢者だけでなく、就労経験のない中年や外国人など、あらゆる属性の人々を労働力として受け入れるためにも、多様性を重んじるダイバーシティマネジメントへの取り組みが求められています。
グローバル化の波
あらゆるビジネスにおいて、日本企業の海外進出、また海外企業の日本進出が活発に行われています。ビジネスのグローバル化は、今や当たり前の現象となっていますが、一方で世界中のあらゆる価値観を網羅して理解できる企業はそう多くはありません。
多様な価値観から生まれるニーズを捉えるには、企業側も多様な価値観を持つ必要があります。あらゆる人種や属性の人々を受け入れるダイバーシティマネジメントこそが、そうしたグローバル化の波に順応できる価値観を築けるのです。
VUCAの時代の到来
IT技術の革新や新型コロナウイルスまん延の影響により、現代は予測が困難な「VUCAの時代」となりました。VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った造語で、不確実で複雑に変動する曖昧な社会情勢のこと。いつどうなるか分からない時代に対応するには、旧来の固定された価値観だけでは難しいといえるでしょう。
多様性を重んじるダイバーシティマネジメントは、あらゆる社会の変化に対応できる可能性をもつ価値観のひとつです。予測不能な変化を遂げる時代を生き抜くためにも、あらゆる多様な価値観を内包できるダイバーシティマネジメントの存在が必要不可欠とされています。
『生物はなぜ死ぬのか』
こと自然環境においても、変化する環境の中で、生物たちが生き残るための進化を続けています。その結果として、多種多様な生物が生まれ、環境が成立しているのです。ビジネスの情勢や組織についても、自然環境と同様、持続するためには多様な考え方や進化の発想が必要と言えます。
企業で導入するためには...
実際に企業がダイバーシティマネジメントを導入するためには、どのようなポイントに注意すればよいのでしょうか。
人材評価基準の明示
ダイバーシティマネジメントにおいて大きな課題とされるのが、人事評価基準の明示です。従来の日本企業では、終身雇用を前提とした年功序列の評価が一般的でしたが、人材の多様化が進むことで、それぞれが持つ異なる強みに対して公平な評価が必要になります。
多様化を受け入れることは、時短勤務や転勤不可、週3勤務などのあらゆる働き方の許容に繋がります。そうしたフルタイムの残業・転勤あり社員とは異なる働き方の人材が活躍できることが、ダイバーシティマネジメントの必須事項です。あらゆる働き方の社員が平等に活躍し評価される人事評価が実現してこそ、ダイバーシティマネジメントを導入できているといえるでしょう。
企業のビジョンを発信する
ダイバーシティマネジメントへの取り組みをビジョンとして発信することで、企業が多様性を重視する姿勢を内外に広められます。経営陣が真剣にダイバーシティマネジメントに取り組もうという姿勢が重要です。
企業の繁栄のため、多様性を尊重する企業文化を育てたいという熱量があってこそ、発信を通じて内外の関係者を巻き込み、そういった文化を企業に根付かせることができます。
日本企業での導入事例
日本でもダイバーシティマネジメントは浸透を始めており、大きな成果を挙げている企業も増えてきています。経済産業省が発表した『令和2年度「新・ダイバーシティ経営企業100選」』から、ダイバーシティマネジメントを導入した実例を2例ご紹介します。
株式会社熊谷組
男性中心の働き方や価値観が根強い建設業界において、業界大手の熊谷組では全社員を対象にした「働き方改革」を実施。女性等の活躍推進を目的に、ダイバーシティ研修を行い、固定観念や価値観の違いによるコミュニケーション不足解消に取り組みました。
その結果、女性社員の活躍の妨げとなっていたアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)の解消が進み、イキイキと働ける環境構築が進みました。また職場環境整備の一環として社内施設を点検する「ダイバーシティパトロール」を設置し、パトロールの結果を社内ホームページで発信することで、全社における働き方への意識改革を促しています。
大橋運輸株式会社
人材確保が大きな課題である運送業。愛知県の中小運送業である大橋運輸では「みんな違う。だから、いい。」をキャッチコピーとしたダイバーシティへの取り組みを実施。LGBTQ理解への取り組みや、あらゆる属性の人材の採用促進、女性、障害者、高齢者の活躍サポートにより、多様な人材が活躍できる社風を作り上げました。
その結果、女性社員比率は2006年の5%から2018年には20%まで増加。女性管理者数も管理者全体の半数を占めています。また外国籍の社員8名、障害のある社員4名、LGBTQ人材が社内で多数活躍するなど、多様な人材の活躍推進に成功しています。
企業で取り入れるための第一歩は
ダイバーシティマネジメントの導入を成功させるには、何よりも経営陣が熱量を持って仕組みを考え、戦略を推し進めることが大切です。その一方で、現場レベルでの取り組みも重要。環境や文化を整備し、多様な人材が活躍しやすい土壌作りが求められます。
コミュニケーションを円滑にする
ダイバーシティマネジメントの第一歩として、まずは既存の従業員同士が円滑にコミュニケーションを取れる環境が必要です。
人材が多様化しても、社員同士の連携が成り立たないのでは、ダイバーシティの実現は遠いと言わざるを得ません。社員同士が気軽に円滑なコミュニケーションを行えるようになれば、従業員の心理的安全性が確保され、ダイバーシティマネジメントを受け入れる土壌ができるでしょう。
off-JTでの学習を促進する
多様性を受け入れる土壌を作るには、従業員それぞれが多様な考え方を持つことが重要です。社内の環境に閉じこもり、限られた人間関係の中で仕事に取り組み続けると、考え方も凝り固まるもの。あらゆる価値観に触れ、広い世界を知ることが、ダイバーシティを受け入れる土壌を作るために必要です。
そうした価値観の育成には、仕事から離れた場所で行うoff-JTが有効です。外部での学習を促進できるよう、企業側から補助金を出すなどのサポートを行ってもよいでしょう。
『WORK DESIGN(ワークデザイン) 行動経済学でジェンダー格差を克服する』
一口にoff-JTといっても、 “ダイバーシティ研修”と安易に銘打ってしまうことには実は注意が必要です。それは、「免罪符効果(モラル・ライセンシング)」という効果を生む可能性があるからです。これは人が好ましい行動をとった後に、悪い行動をとる傾向がある、といった現象で、ことダイバーシティ研修においても、それを受講したことで「免罪符」を得たと感じることがあります。
off-JTは非常に大切な要素ですが、社員への伝わり方に関しては細心の注意を持って設計をすることがおすすめです。
企業の多様性に貢献する、flier法人版
最後に当社フライヤーが提供するサービス「flier法人版」の活用についてご紹介いたします。
flier法人版は、3,000冊を超えるビジネス書籍の要約を自由に閲覧できるサービスです。ビジネス書籍の数百ページ分を、わずか10分で読める文章量に要約。短い時間で効率よく学べる教材としてご活用いただけます。
多様な価値観の受け入れは、多様な価値観のインプットから。flier法人版では、古今東西のあらゆるビジネス書をわずかな文章量に要約。短時間で多くの要約を読み、あらゆる価値観に触れられます。
また読んだ要約の感想を、掲示板として使える「学びメモ」で共有すれば、社員同士が意見の交換を通じて、新たな価値観を考えるきっかけとなるでしょう。
多様性を受け入れる文化への第一歩として、ぜひflier法人版の導入をご検討ください。
まとめ
事業のグローバル化や価値観の変化が著しい現代において、多様な価値観を取り入れるダイバーシティマネジメントは必要不可欠な取り組みです。あらゆる変化に対応し、多くの顧客のニーズに応えるためにも、あらゆる個性を受け入れるダイバーシティマネジメントの導入は加速していくでしょう。
社員に活躍の場を提供し、多種多様な顧客からの支持を集めるためにも、今の時代に即した価値観であるダイバーシティマネジメントの導入を推し進めていきましょう。
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