多くの会社が抱える課題のひとつとして「離職率」が挙げられます。離職率が高い会社は、社員が定着しないことが事業のスピードに影響したり、採用活動に多額のコストがかかったりするなど、多数の課題を抱えることにつながってしまいます。社員を定着させて離職率を下げ、事業を成長させていくにはどんな対策が必要なのでしょうか。今回は離職率が高い会社の特徴と、離職率を下げるための対策についてご紹介します。要点1離職率が高まる要因は、コミュニケーション不足や労働時間の長さなどさまざま要点2従業員の離職率を軽視すると、企業は多大な不利益をこうむる要点3離職原因の多くに関係する「コミュニケーション」の改善が重要目次そもそも離職率とは離職率とは具体的にどのような指標なのでしょうか。厚生労働省が発表する「雇用動向調査結果の概況」によれば、以下の計算式で算出される数値であると定義されています。離職率=離職者÷1月1日現在の常用労働者数×100%仮に、1月1日時点で1,000名の社員(常用労働者)が在籍していた会社において、その年内に35人の退職者が出たとすれば、離職率は3.5%と計算されます。あくまで基準となる常用労働者数は1月1日の人数です。年内に社員を増やしていたとしても基準の母数には影響しませんが、年内に入社した新入社員が対象の期間内に辞めた場合には、計算上の離職者として計上されます。離職率が高くなってしまう要因とは?厚生労働省が発表した「2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概要」によれば、2019年における全業種の平均離職率は15.6%でした。離職率は業種・職種によって変わりますが、もし自社の離職率が平均離職率を大きく上回るような場合には、離職率につながる悪因が隠れているかもしれません。適切な評価が行われていない会社や上司から適切に評価されていないと感じた社員は、離職に傾く傾向があります。どんなに成果を挙げても上司から評価されず、待遇に反映されない状態が続くと、社員は会社に対する信頼を失っていくでしょう。成果を挙げていない社員を高く評価する必要はありません。しかし、努力や成果に応じた正当な評価を受けられてこそ、社員は会社のために働こうという意欲が高まるものです。労働時間が長い労働時間の長さは、往々にして社員のやる気を低下させます。長時間の残業が当然視されている環境では、社員は心身共に疲れ果ててしまうため、その会社で長く勤め上げようという気持ちは湧かないないでしょう。日常的に長時間残業をする社員ほど評価されたり、上司が率先して深夜残業・休日出勤を繰り返したりする風土の会社においては、仕事とプライベートの両立を求める社員の退職を止めることは難しいでしょう。人材育成ができていない人材育成の制度が整っていない会社は、若手社員が定着しなくなる傾向があります。新入社員が何かを教わろうとしても、誰に聞いたらいいかわからない、誰も何も教えてくれないというような環境では、早々に見切りをつけられてしまいかねません。このような環境は新入社員の心理的負荷にも直結します。仕事を通して積極的に学びたい人にも、自分のペースで成長したい人にとっても、育成やフォローの体制は必須と言えます。人間関係、コミュニケーションに問題がある人間関係やコミュニケーションの不和も離職に直結する大きな課題のひとつです。仕事をするにあたっては、同僚間や部署間、上司部下間などさまざまなコミュニケーションが発生します。そのコミュニケーションに課題があれば、当然ながら仕事にかかる負荷や心理的ストレスも大きくなってしまいます。離職率が高いことによる問題離職率が高まると、企業にとってさまざまな不利益が生まれます。その影響は収益の減少や費用の増加に及び、企業に大きく影響する可能性があります。社員への教育コストが無駄になってしまう社員の教育には多くのコストがかかります。そのコストは金銭的な費用に限らず、教育担当の労力や会社が割いた時間など、多岐に及びます。長い時間と手間、お金をかけて教育した社員の退職は、それまでのコストを無駄にすることにもなります。採用にかかるコストが増大する社員が退職して抜けた穴は、新しい社員を雇用して埋めなければなりません。新たな社員の募集には求人広告を出す必要がありますが、それには広告費がかかるため、社員の穴埋めが発生するごとに会社に金銭的な負担がかかります。離職が多ければ、それだけ求人広告を出す頻度も上がります。また採用担当の手間も増加しますので、教育コストと同様に、無駄なコストが発生し続けることになってしまうのです。自社にノウハウが蓄積されない社員が現場で培ったノウハウは、会社全体の財産となります。多くのノウハウの積み重ねにより会社は成長していきますが、社員が離職すると、その社員が独自に培っていたノウハウが会社に残らず、事業の成長は鈍化してしまいます。ノウハウが蓄積しない会社は、さらに大きな仕事をするための能力を培えず、大きなチャンスを得られません。すなわち、社員が頻繁に離職する会社は、それだけ多くのノウハウとチャンスを失っていることに他ならないのです。離職率改善のための3つのアクション高い離職率は、会社が抱える問題が表に出た結果ともいえます。そういった状況を脱するには、社員の「エンゲージメント」を高めることが重要です。『 楽しくない仕事は、なぜ楽しくないのか? エンゲージメントで“働く”を科学する』エンゲージメントとは、活力や熱意をもって仕事に没頭している状態を指します。このエンゲージメントが高いと、結果的に組織や企業への貢献度合いも強まることがわかっています。社員が辞めたくなるような会社の問題を解決し、社員のエンゲージメント向上によって離職率を改善するためには、どんな対策があるのでしょうか。労働環境の改善社員が辞める原因の多くは、働く現場にあります。社員にとっての問題や改善点、労働環境の課題点を洗い出してみましょう。労働環境の問題は、ひとつとは限りません。給料や労働時間、評価基準など、社員が不満を感じる原因はさまざまです。自社内で検討しても思い当たる節がないようなら、他社の事例と比較してもよいでしょう。もちろん、社員のすべての希望にあわせて環境を変えるのは現実的ではありません。しかし会社が見せる改善への姿勢は、社員にとって希望となるでしょう。いきなり大きく環境を変えるのは難しいかもしれませんが、社員が長く働きたいと思えるように、少しずつ労働環境を見直しましょう。採用基準の見直し社員が離職する原因のひとつに、そもそも会社にマッチしていない人材が入社していたことも考えられます。そうした人材は社内の問題が改善できても離職しやすく、会社にとっても人材にとっても良い結果を生まないケースが多くあります。採用のミスマッチを防ぐには、採用要件と人材にズレがないか、採用企画の段階でじっくり吟味することが大切です。こうした吟味の時間を確保し、精度の高い採用を実現することが、その後の離職率の改善にもつながります。『日本一働きたい会社のつくりかた』では、リンクアンドモチベーション社主催の「ベストモチベーションカンパニーアワード2017」で第1位となったLIFULLの事例が紹介されています。本書では、同社の施策のうち、採用基準の見直しによっていかに効果が出たかを、具体的に知ることができます。社内のコミュニケーションを再考する離職率に直結する問題のひとつが、社内のコミュニケーション不足です。これは上司と部下間のコミュニケーションに限らず、部門間や事業所間、また同僚同士といった幅広い範囲が含まれます。人事関連の調査を手掛ける「HR総研」が行った『「社内コミュニケーション」に関するアンケート調査』によれば、実に9割の企業が「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になる」と回答しています。業務の進行がスムーズにいかなければ業績が落ち、結果として個々の社員の評価にも悪影響を及ぼします。ひいては、会社への信頼失墜につながります。裏を返せば、積極的なコミュニケーションの実現が業績アップにつながり、離職率が改善できるといえます。社内SNSや座席を固定しないフリーアドレス制など、多くの企業が社員間の交流活性化に積極的に取り組んでいます。『 ゴールドマン・サックス流 女性社員の育て方、教えます 励まし方、評価方法、伝え方 10ケ条』社内ネットワークづくりは、本書からも学ぶことができます。ゴールドマン・サックスで実践された、女性の離職率低下を目標とした社内外のネットワークづくりの事例が、紹介されています。読書を通して社員間のコミュニケーションを密にする、flier法人版最後に当社フライヤーが提供するサービス「flier法人版」を活用したコミュニケーションの改善についてご紹介いたします。flier法人版は、3,000冊を超えるビジネス書籍の要約を自由に閲覧できるサービスです。1冊当たり10分で読める要約は、短い時間でのインプットにぴったり。社員同士のコミュニケーションの話題として大いにご活用いただけます。メンバー同士で読んだ本の記録や感想を共有できる「学びメモ」は、同じ本を読んだ同僚とのコミュニケーションのきっかけとなるでしょう。また社員に向けた福利厚生のひとつとしてご提供いただくことで、社員と会社間の関係改善にもお役立ていただけます。社内のコミュニケーション活性化のためにも、ぜひflier法人版をご利用ください。まとめ社員が離れやすい会社は、教育や採用に多くのコストがかかります。またノウハウを蓄積した社員が離職することで、会社にノウハウが蓄積せず、業績アップへの悪影響も出かねません。離職率が高まる原因には、社内制度の不備や労働環境への不満、社内コミニュケーションの不足など、さまざまな要因があります。自社がどんな問題を抱えているかを発見し、ひとつひとつ見直しができれば、悩みの種だった離職率は改善に向かていくはずです。Revenue growth photo created by rawpixel.com - www.freepik.com